小説

モーム「雨・赤毛」

雨・赤毛: モーム短篇集(I) (新潮文庫)作者: サマセット・モーム,William Somerset Maugham,中野好夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1959/09/29メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 11回この商品を含むブログ (24件) を見る 二階に上がって、秘めやかな悦…

ソルジェニーツィン 「イワン・デニーソヴィチの一日」

イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)作者: ソルジェニーツィン,木村浩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1963/03/20メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 25回この商品を含むブログ (45件) を見る生活のうちには、生活を支える生活と呼ぶべきものが常に根づ…

コレット「シェリ」

シェリ (岩波文庫)作者: コレット,Colette,工藤庸子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1994/03/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 27回この商品を含むブログ (17件) を見る サガンの「ブラームスはお好き」を思い出した。人物造形やプロットが似ていなく…

エミリー・ブロンテ「嵐が丘」

嵐が丘(上) (岩波文庫)作者: エミリー・ブロンテ,河島弘美出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/02/17メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 11回この商品を含むブログ (28件) を見る 平易な文章と会話文の多さから、子ども向けの小説なのだろうかと読み始め…

ジョージ・オーウェル「一九八四年」

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2009/07/18メディア: ペーパーバック購入: 38人 クリック: 329回この商品を含むブログ (350件) を見る 巻末に寄せてあるピンチョンの解説のよう…

「カフカ寓話集」ブランコ的無限地獄

10/12加筆。「やる気のない感想」改め、「ブランコ的無限地獄」に昇格。 カフカ寓話集 (岩波文庫)作者: カフカ,池内紀出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1998/01/16メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 33回この商品を含むブログ (54件) を見る 巣穴内の事情…

チェーホフ「桜の園」

桜の園 (岩波文庫)作者: チェーホフ,小野理子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1998/03/16メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (40件) を見る 未来への希望と幸福への予感を諭す抒情的な青年・トロフィーモフによって、決定的な没落…

ジャン・コクトー「恐るべき子供たち」

恐るべき子供たち (岩波文庫)作者: コクトー,鈴木力衛出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1957/08/06メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 32回この商品を含むブログ (53件) を見るろくに学校に通わず、働きにも出ないで享楽的な日々を送る少年少女たちは、奇妙…

三島由紀夫「午後の曳航」論4理想主義者と冷笑主義者と無神論者と

9/14大幅訂正。なにがなんだか分からない。 *1 明徹な炯眼とペシミスティックな無神論、それが早熟なこの一団、特に「首領」の形容と言えよう。そんな彼らにとって、かの船乗りが自分を男らしさの極致へ追いつめてきたあの重い甘美な力を振り捨て、爛れるよ…

三島由紀夫「午後の曳航」論3日常は理想の夢を見る

つくづく自分が船乗りの生活のみじめさと退屈に飽きはてていることを発見していた。彼はそれを味わいつくし、もう知らない味は何一つ残されていないという確信をも持った。それ見ろ! 栄光はどこにも存在しなかった。世界中のどこにも。北半球にも南半球にも…

三島由紀夫「午後の曳航」論2少年は物語を夢見る

中学生の登は、父をすでに幼少に亡くしており、それ以来、未亡人の母の流麗な包容に取り囲まれていた。これによって、彼は、母性の攻囲(これについては後述する)の一方で、きらきらした、別誂えの、そこらの並の男には決して許されないようなあの光栄なる…

三島由紀夫「午後の曳航」論1父の背について

あらすじ 船乗り竜二の逞しい肉体と精神に憧れていた登は、母と竜二の抱擁を垣間見て愕然とする。矮小な世間とは無縁であった海の男が結婚を考え、陸の生活に馴染んでゆくとは……。それは登にとって赦しがたい屈辱であり、敵意にみちた現実の挑戦であった。登…

アーシュラ・K・ル=グウィン「闇の左手」を読んで

2009年2月に書いたものを再掲します。 あらすじ 両性具有人の惑星、雪と氷に閉ざされたゲセンとの外交関係を結ぶべく派遣されたゲンリー・アイは、理解を絶する住民の心理、風俗、習慣等様々な困難にぶつかる。やがて彼は奇怪な陰謀の渦中へと……エキゾチック…

太宰治「斜陽」読解

あらすじ 最後の貴婦人である母、破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため”生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだ…

梶井基次郎「桜の樹の下には」「愛撫」読解

「桜の樹の下には」においては、述懐者の様々な空想、というか病的な執着が開陳されています。 桜の根は貪婪な蛸のように、それ(注:種々の動物の屍体)を抱きかかえ、いそぎんちゃくの食糸のような毛根を集めて、その液体を吸っている。 それは渓の水が乾…