コレット「シェリ」

シェリ (岩波文庫)

シェリ (岩波文庫)


サガンの「ブラームスはお好き」を思い出した。人物造形やプロットが似ていなくもないが、49歳の高級娼婦である「シェリ」のレアと、39歳のビジネスウーマンである「ブラームス…」のポールはやはり別の種類の人間だ。職業の相違、経験の差以上に、10という年齢の開きが求める男性像に決定的な隔たりを生む。一方は息子を求め、もう一方は父を求める。だが、いつかは訪れる頽齢への残酷な予感が、若さ特有のしなやかさからの別離を、まるでそれが宿命であるかのように強く迫るのは同じことなのだ。かくして、ひそやかな胸騒ぎと向こう見ずな開き直りの混交は「年齢」に追いつかれる。中年の女性は麗しい青年の思いもよらぬ眩しさにたじろがざるを得ない。


その後には、ひっそりとした、ささやかな幸福が女性たちに赴くだろう。華やぎに欠けた、年齢に相応しい落ち着き払った安息。そこにはいつだって諦めの苦い味が淡く漂う。