2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

「シーシュポスの神話」を読解する8

論証は終わり、章は「不条理な人間」に移る。カミュはこの章で、「不条理な論証」で引き出した人間像、すなわち自己を汲みつくすことだけをめざす人びと、あるいは自己を汲みつくしていると彼の考える人びとを例として検証していく。私の導出した理想の人間…

「シーシュポスの神話」を読解する7

(3/17後半大幅に書き換えました) これまでのところ、不条理を抱え持って確実なものだけに依拠して生きるということは、なかなか良いものだということが判明した。明徹な意識を維持することなく不条理を捨て去って生きる者に比して、そうした生き方が何層倍…

「シーシュポスの神話」を読解する6

束縛条件から抽き出された帰結の一つ目は反抗という精神態度であった。この解答はさしあたり私たちに生きることを薦めるものであったが、残りの帰納的事実もまた生存を肯定するのであろうか。次は議案を「自由(p.99)」に移して見ていこう。とは言っても、今…

「シーシュポスの神話」を読解する5

(えーと、現象学についての記述をすっぽかしているので4を飛ばして5になります。) 人間を全被造物に対立させている(p.92)ものは、ただこの理性であり、またそれこそが世界とのあいだにのっぴきならぬ葛藤――不条理――を与える。確実性と明証性への徹底的な…