2010-01-01から1年間の記事一覧

「シーシュポスの神話」を読解する7

(3/17後半大幅に書き換えました) これまでのところ、不条理を抱え持って確実なものだけに依拠して生きるということは、なかなか良いものだということが判明した。明徹な意識を維持することなく不条理を捨て去って生きる者に比して、そうした生き方が何層倍…

「シーシュポスの神話」を読解する6

束縛条件から抽き出された帰結の一つ目は反抗という精神態度であった。この解答はさしあたり私たちに生きることを薦めるものであったが、残りの帰納的事実もまた生存を肯定するのであろうか。次は議案を「自由(p.99)」に移して見ていこう。とは言っても、今…

「シーシュポスの神話」を読解する5

(えーと、現象学についての記述をすっぽかしているので4を飛ばして5になります。) 人間を全被造物に対立させている(p.92)ものは、ただこの理性であり、またそれこそが世界とのあいだにのっぴきならぬ葛藤――不条理――を与える。確実性と明証性への徹底的な…

「シーシュポスの神話」を読解する3

ヤスパースは自己の無力を告白し、自己の存在と超越者を求める努力は究極的に挫折を経験すると考えた。私たちはついに世界の「本当のこと」=世界の究極的真理を知ることはできず、自らの絶対的限界を思い知ることになるというのである。なるほどこれは納得…

「シーシュポスの神話」を読解する2

ここまでの流れを改めて確認しておこう。特に、不条理の分析方法についてはまだ抽象的で、その意味するところが十分に汲み取りきれないので、それについても具体的に見て行こう。 幸福と理性への欲望(p.53)という人間的な呼びかけと世界の不当な沈黙の対置、…

「シーシュポスの神話」を読解する1

読解と冠しましたが、本文の逐一解釈・解説と言った方が適切でしょう。興味はあるんだけど難解で挫折した…という方や、カミュの不条理の哲学を理解したいと思っている方のお役に立てられれば幸いです。また、彼の小説、特に「異邦人」に込められた思想も解釈…